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大阪地方裁判所 昭和29年(ワ)3617号 判決

大阪相互信用金庫

事実

原告(大阪相互信用金庫)は請求の原因として、

被告(井野光典)は東亜合成化学工業所安達一の名義で訴外武知に宛て、(イ)昭和二九年二月一一日、金額一一三、〇〇〇円、支払期日同年五月一六日、支払地振出地大阪市、支払場所株式会社大和銀行片町支店なる約束手形及び(ロ)同年三月六日、金額一一三、〇〇〇円、支払期日同年五月一八日その他の要件前同一なる約束手形を各振り出し、原告は右武知よりその裏書譲渡を受けて適法な所持人となり、右各支払期日にそれぞれ支払場所に呈示して支払を求めたがいずれも支払を拒絶された。よつて右手形金および損害金の支払を求めると述べた。

被告は原告の主張事実を全て否認した。

理由

証拠(証人安達一の証言等)によると、被告はかねて訴外武知に金融するため、自己振出名義の約束手形を同人に交付し、武知はこれに裏書した上原告天六支店に差し入れて手形貸付を得ていたところ、昭和二九年三月一〇日頃、被告は右武知の妻と同道して同支店に到り、差し入れてあつた前記約束手形と本件手形二通とを差し換えたこと、その際被告は原告係員牧野芳雄に対し、「自分は本件手形の振出人名義になつている東亜合成化学工業所を経営しているが、手形に自分の名を出すと税務所関係で都合わるいので実際の振出人は自分であるが、安達一の名前を使用している」といつて東亜合成化学工業所代表者安達一名義で振り出された本件手形二通を原告に交付したこと、被告は当時振出人名義となつている安達一の印を同人より預かつていたことを各認めることができる。してみれば被告は右振出人名義を使用して自己を振出人として本件手形二通を振り出したものと認めるを相当とする。よつて被告は約束手形振出人として右手形金合計金二二六、〇〇〇円及びこれに対する昭和二九年五月一九日以降支払済まで年六分の割合による金員の支払義務があり、原告の請求は正当であるとしてこれを認容した。

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